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| 涼の幸(さち) | 《皆で考えたい話》 | 投稿者:仙台市 風鈴ノ音 | 2007.06.25 |
去年の夏、ご自宅で療養されていた小学校時代の先生をお見舞いしに伺いました。家族の方に部屋に通していただくと、すっかり痩せてしまった先生の姿がそこにありました。 一緒にお見舞いに来た友だちも、その先生の姿に驚いたようでした。
先生は、私達に気づくと、「来てくれたのかぁ」と言って、笑顔を見せてくれたのですが、私にはその笑顔がとても悲しくて、胸に詰まるものがこみ上げてしまいました。
友達は、それを察しったのか、明るい声で
「この部屋少し暑いよぉ。窓閉めてクーラー付ければいいのにぃー」と先生に話し掛け。
病院で看護士をしている友達は、療養中は、体に負担が掛からないように部屋の温度は調節した方が良いと、先生の体調を心配しているようでした。
その時、先生はゆっくりと窓に首を向け、
「窓を閉めたら、風鈴の音が聞こえないから」とポツリ。
そして、
夏の暑い日は、窓を開けて、風鈴の音で涼を感じ、
冬の寒い日は、窓を閉めて、コタツで暖をとる。
夏は 汗をかきながら食べるカキ氷が、冬は白い息を吐きながら食べる焼き芋が美味しいんだよ
と、細い目をして教えてくれました。
「私達教師は、そういうことを子ども達に教えなければいけなかったんだろうねぇ。」
いつも間にか、私は小学校時代に戻ったような気分になっていました。
その後も、先生はゆっくりとした口調でいろんなことを話してくれました。
自分が楽すれば、その陰で苦労してしまう人がいる。
今生きている人が、"楽"とか"幸"を欲張ってしまったら、"苦しい部分"は全部 未来の子ども達に負わせてしまう。 私は退職しても、教師でありたいと思うし、子ども達のお手本でありたいと思う。
そして、死ぬまで子ども達のことを考えてあげたい…と。
「小さなことに喜びを感じるような人間になりなさい」
お見舞いに来て、先生を元気付けて、昔お世話になった恩返しをするつもりだったのですが、いつの間にか、私達二人は、先生から教えを受けていました。
昔と変わらない空気。それをまた味わうことができたような気がします。
その年の暮、先生は他界されました。享年78歳。
私にとって、学生時代も、そして卒業してからも、一番尊敬できる先生でした。
6月21日に掲載された葵さんの『モルディブの海』というコラムを読んだ時、私は先生の言葉を思い出しました。
「自分が楽すれば、その陰で苦労してしまう人がいる。」
この夏は猛暑だと言われてますが、窓を開け、扇風機の風と風鈴の音で"涼の幸"を味わってみようかと思います。
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