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息子の手 ≪ちょっと涙≫ 長野県 主 婦 Y.Kamiyama 2009.05.27

病院から母が亡くなったとの連絡がありました。

糖尿で且つ不整脈だった母は、
過去に2度心筋梗塞になったことがあり、

入院先の主治医の先生からは、

「今度心筋梗塞を再発したら、次は危ないかもしれません」

と言われていました。

市役所で働く息子に連絡すると、

「すぐに病院に行くから」

という返事が返ってきました。

タクシーに乗って病院に向かった私。

タクシーの中では大丈夫だったのですが、病院に着くと
急に母と対面するのが怖くなってしまいました。

病室はおろか、病院の中にさえ入ることが出来ない。

仕方なく、私は正面玄関の外にあるベンチに腰かけて息子を待つことにしました。

指先が小刻みに震えているのが分かりました。

しばらく座っていると、「母さん」という息子の声が聞こえました。

息子の顔を見て「あー、たけし」と言うと、

それまで抑えていた感情が溢れるように涙が出てきました。

息子は私の隣に座り、背中をさすってくれました。

やがて、私が落ち着くと、

「そろそろ行こうか、おばあちゃん待ってるから」

そう言って私の手を握ると、そのまま一緒に歩いてくれました。

それは、いつの間にか私よりも大きく、たくましくなった手でした。

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